【下関駅放火事件】生きるために犯罪を繰り返す人
- 2020.08.19
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下関駅放火事件とは
概要
2006年1月7日午前1時50分ごろ、
下関駅構内のプレハブ倉庫から出火、駅舎に延焼し、木造平屋建ての駅舎東口が全焼。
同建物(1942年建築)は特徴的な三角屋根を持ち、下関市のシンボル的な存在だった。
また下関乗務員センターや出火元の倉庫も全焼、焼失面積は延べ約3,840平方メートルに及んだ。
人的被害はなく、高架上にあるホームや線路、架線にも被害はなかった。
同日、現場近くにいた当時74歳の無職の男性が、放火の容疑で下関警察署に逮捕された。
男性は2001年(平成13年)にも福岡県内で放火未遂事件を起こし逮捕されており、2001年12月に福岡刑務所を出たばかりだった。
男性は過去10回にわたって服役を繰り返してきた知的障害者、いわゆる「累犯障害者」であった。
累犯障害者(るいはんしょうがいしゃ)は、
山本譲司によるノンフィクション作品。
刑務所には身体障害および精神障害を持つ受刑者が多数存在し、彼らは劣悪な生育歴の中でほとんど福祉と結びつくことがなく微罪で、繰り返し刑務所に入ることによって生き延びている。
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出所した8日後に本事件を起こした。
男性は身寄りがなく、出所後も警察に保護されるなどした。
仕事や住む場所もないまま行くあてもなくさまよっていたが、手持ちの金銭が底をついた。
放火事件の前日、逮捕・拘留されるために、福岡県北九州市内で万引きして自ら申し出、小倉北警察署に連れて行かれた。
事情聴取を受けたものの逮捕・拘留には至らず、留置場に入ることはできなかった。
福岡県警察は、区役所の窓口で生活保護の相談をするよう勧めた。
男性は北九州市の小倉北区役所に生活保護を申請しに行き、
「刑務所から出てきたばかりで住むところがない」と言うと
「住所がないと駄目だ」と相手にされず、そこで下関駅行きの切符を一枚と、山口県の下関市役所までの路線バス運賃190円を渡された。
男性は電車で下関駅まで行って夜まで駅で過ごしていたが、駅の営業時間終了により、山口県警察の警察官から駅の外に退去するように言われ、居場所を確保できなかった。
犯行の動機は「刑務所に戻りたかったから」と述べた。
1月27日、山口地方検察庁は男性を山口地方裁判所下関支部に起訴した。
2008年(平成20年)3月26日、山口地方裁判所で判決が言い渡され、山本恵三裁判長は「本件による駅の被害額が5億円にも昇り、列車運行に大変な支障を来たした罪は重い」としつつも「軽度の知的障害で、高齢でありながら、出所後、格別の支援を受けることもなく、社会に適応できなかったことは、酌むべき事情」として、山口地方検察庁が論告求刑で請求した懲役18年の求刑に対して、
男性に懲役10年の実刑判決を言い渡した。
山口地方検察庁が控訴しなかったため、一審が確定判決となった。
火災拡大の原因
東口の駅舎は高い三角屋根と、吹き抜けになったコンコースを持つなど、火災旋風が起きやすい構造だったにもかかわらず、耐火構造になっていなかった。
この日の下関市は冬型の気圧配置が続き、時折雪を伴った北西からの強風が吹いており、気象台からは風雪注意報が発表されていた。
また、スプリンクラー設備も、消防法で設置が義務付けられる基準に達していなかったため、駅舎に備え付けられていなかった。
こうした要因が複合して、延焼が拡大したと指摘されている。
事件の余波・対応
この放火事件がひとつのきっかけになり、障害を持つ受刑者や再犯率が7割を超えている高齢受刑者への対策、及びこれら受刑者の出所後の更生保護のあり方の再構築、法務省・厚生労働省による司法と福祉の連携が課題として認識され、2007年度から刑務所施設内で社会福祉士の採用が始まった。
2009年度には刑務所や少年院を出る人への福祉的支援や住居確保を行う「地域生活定着支援センター」の事業が開始された。
事件後
2006年、山本譲司が自著で本事件と犯人に言及し、高齢受刑者や累犯障害者の問題を取り上げた。
以後こうした問題や刑務所の様子がマスコミなどで報道されるようになった。
男性は2016年(平成28年)6月2日に福岡刑務所を仮出所、同年8月3日に刑期満了となった。
出所した際には北九州市内のNPO法人「抱樸」の理事長である奥田知志と同NPOの職員ら支援者が迎えに行った。
元受刑者は計11回、50年以上服役し、社会にいた年月のほうが短く、また過去10回の出所時には、誰かが迎えに出ていたことはなかった。
出所後は同NPOの施設で暮らし、また奥田・職員らとともにテレビ朝日『テレメンタリー2017』による7ヶ月間の取材を受け、
2017年1月22日、更生しようとする元受刑者の日常や、同NPOの支援の様子が放送された。
また元受刑者は2017年3月、東京社会福祉士会主催のシンポジウムに支援者の奥田とともに出席・登壇・発言したほか、
2017年4月18日放送『NHKニュースおはよう日本』内のコーナー「けさのクローズアップ」でもこの元受刑者が取り上げられ、奥田とともに取材を受けている。
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