【積水ハウス地面師詐欺事件】大手ハウスメーカーが何故?ドラマ「地面師たち」の元ネタはこの事件
- 2024.09.03
- 日本の事件
地面師とは
土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る不動産をめぐる詐欺を行う者、もしくはそのような手法で行われる詐欺行為のことである。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
地面師らは、10人前後で構成されていることが多い。
・計画を立案する主犯格のボス
・なりすまし役を発掘する「手配師」
・なりすましの演技指導を行う「教育係」
・免許証やパスポートなどを偽造する「印刷屋」
・振込口座を準備する「銀行屋」
・法的手続きを担当する弁護士や司法書士の「法律屋」
このように細かく役割を分担して犯行を実行する。
事件概要
| 事件発生日 | 2017年6月1日 |
| 内容 | 積水ハウスが地面師グループに 土地の購入代金として55億5千万円を騙し取られた。 |
| 被害者 | 積水ハウス |
| 犯人 | 逮捕者15人。 不起訴多数。 |
| 事件の舞台 | 東京都品川区西五反田2-22-6 旅館「海喜館(うみきかん)」 |
海喜館
所有者:海老澤佐妃子さん
山手線の駅から徒歩3分の好立地にある2000㎡の敷地
2008年以前より多くの不動産会社が、旅館「海喜館」の土地を購入したいために
たびたび佐妃子さんに接触していた。
しかし佐妃子さんは断固として土地の売却を拒否。
佐妃子さんは、客を装って接客時に旅館売却を迫る不動産関係者に嫌気が差して常連以外を宿泊させなくなった。
そして2015年3月「海喜館」は廃業となる。
廃業後も佐妃子さんは旅館に住み続け、土地の売却を拒否している。
古希を過ぎた佐妃子さんはやがて体調を崩し入院し、2017年2月以降「海喜館」周辺で姿を見なくなる。
目をつけた地面師たち
地面師たち
この事件を最初に計画を立てたのが、名の知れ渡った大物地面師といわれている内田マイク。

実行リーダーはカミンスカス操。

計画を立てたのは、佐妃子さんが入院する2か月前の2016年11月から12月にかけて。
内田は佐妃子さんに接近するため、旅館横の月極め駐車場をの賃貸契約書を交わした。
月極め駐車場契約の目的
所有者に会うことで個人情報を得ることができる。
・所有者本人の人相風体
・一人暮らしかどうか
・同居人がいるのか
・生年月日、連絡先の電話番号
・印鑑証明や住民票など
積水ハウスへ接近
地面師たちはまず、転売目的で海喜館の土地を購入しようとする中間買主(IKUTA HOLDINGS株式会社)を見つける。
この中間買主から申込証拠金として2000万円を受け取った。
中間業者の買取価額60億円、積水ハウスの買取価額は70億円。
中間業者は積水ハウスを紹介するだけで10億円が手に入ることとなる。
積水ハウスの東京マンション事業部の担当次長は、2017年3月、海喜館が売りに出されているとの情報を入手。
情報源の人物が用意したペーパーカンパニーを仲介業者に挟んだ。
そして「海喜館」購入に向けて話は進んでいく。
積水ハウスの動き
2017年4月4日
地面師グループと中間買主・積水ハウスによる条件面の打ち合わせを行う。
その際地面師グループは「所有者はマンション購入資金として3億円の調達を急いでいる。他にも購入希望者は沢山いるので急いだ方が良い。」と積水ハウス側に対して取引を急かした。
マンション事業本部長だった三谷和司常務執行役員は一気に前のめりになりすぐさま社長の阿部氏に報告。
2017年4月18日
社長の阿部氏が現地を視察。
稟議書は猛スピードで社内を駆け巡り次々に決裁印が押された。
通常は先に回覧するはずの副社長ら幹部4人を飛ばし、社長の承認を得たのは視察のわずか2日後だった。
2017年4月24日
売買契約締結。
手付金の15億円を支払う。
2017年5月10日
土地所有者の海老澤佐妃子さんから内容証明郵便が積水ハウスに届く。
内容は「積水は騙されている」というものだった。
2017年5月11日
さらに同じような内容証明郵便が届く。
この内容の郵便は計4通届いた。
しかし積水ハウスはこの郵便を「怪文書」だとした。
三谷常務は地面師たちに「あなたが出したものではないのであれば、それが違うということを確約してもらう書面を持参している」と言って、確約書を提示し、「そこに住所、氏名を自署し、実印を押印し印鑑証明書を添付して欲しい」と申し入れた。海老澤を名乗る人物は、すぐに確約書に住所、氏名を自署し、実印を押印して、それが実印であることを裏付ける印鑑証明書と共に三谷常務に交付した。
2017年5月25日
積水ハウス常務の三谷の指示により、従来7月末としていた決済日を6月1日と大幅に繰り上げた。
所有権移転の仮登記完了
2017年6月1日
建物取り壊し後に支払う留保金7億円を除いた残金49億円が支払われた。
高額の不動産取引では銀行振込が通例だが、49億円の支払いは小切手5枚で行われた。
2017年6月6日
法務局から不動産の本登記却下の連絡が入る。
ここで偽の所有者から土地を購入していたことが判明する。
2017年6月9日
新宿警察署に被害届を提出するが受理されず。
2017年6月24日
「海喜館」所有者の海老澤佐妃子さんが亡くなる。
2017年7月4日
「相続」として都内大田区の2人の男性が所有権を移転し登記される。
2017年9月15日
警察庁で刑事告訴が受理された。
なぜ急いだのか
阿部社長にとって、積水ハウスを2兆円企業に押し上げた和田勇会長は、目の上のたんこぶだった。そんな会長の影響力がおよびにくいマンション事業は、重要な権力基盤だったとされる。そのためマンション事業部本部長の三谷氏を引き上げ、成功する事で自身の影響力拡大を狙っていた。
そのため、この海喜館の購入はどうしても進めたい話だったと思われる。
詐欺だと気付く多くのサイン
- 土地売買契約の際に行われる所有者の本人確認で、地面師である偽所有者が自分の生年月日や干支を言い間違えていたにもかかわらず、これを問題にしていなかった。
- 不動産会社は通常、地面師対策として通常実施する「所有者」の写真を近隣住民や知人に見せる「知人による確認」を行うが、積水ハウスはこれを実施しなかった。
- 当時不動産部長は、「この取引はおかしい」と言い続けたが、阿部俊則社長や東京マンション事業本部長の常務らは、取引相手のネガティブ情報を伏せ、最終的に不動産部長に捺印させた。積水ハウス本社法務部宛に送られてきた内容証明郵便についても、怪文書の類とみなし不動産部には伝えられなかった。
- 積水ハウスが手付金支払いと仮登記を行った後に、真の所有者から「売買契約はしていない、仮登記は無効である」などと記載された内容証明郵便4通が届けられ、さらにその一通には印鑑登録カードの番号が記載されていたにもかかわらず、積水ハウスはこれらを土地売買を知った者による妨害行為と思いこんで、偽の所有者から内容証明郵便を送っていない旨を記載した確約書を入手する程度の対応しか取らなかった。
- 妨害行為と思いこんだ積水ハウス側はこれに対応するため、残代金の決済日を約2か月早めて6月1日にした。残代金支払日の6月1日には、真の所有者の通報により現地に来た警察官は、積水ハウス社員に対して警察署への任意同行を求めた。残金支払手続中のことで、この連絡を受けた積水ハウス担当者は妨害行為だと思い、そのまま支払手続を完了した。
- 地面師は、これ以前に複数の不動産会社に声を掛けていたが、所有者の本人確認ができないという理由で断られていた。
- 積水ハウスは、都心でのマンション用地買収は得意分野ではなかったが、マンション事業部はこの案件を是非とも進めたい一心で、稟議承認の前に社長に現地を見せ、その後、社長による飛び越し承認があった。社内では「社長案件」と呼ばれるようになっていた。マンション建設用地を確保したいという社内の勢いが強く、その承認体制が機能しなかったといわれる。
まとめ
この事件では積水ハウスの管理体制も問題視された。
地面師たちは15名の逮捕者をだしたが、起訴されなかったものもいる。
積水ハウスは、この事件の報告書の公開を拒否。大阪地方裁判所が積水ハウスに「調査報告書を提出せよ」と命じる判決を出した。
積水ハウスは調査報告書を裁判所に提出することとなったが、「閲覧制限」をかけるよう裁判所に申請し、あくまでも公開を限定的にするよう求めた。
積水ハウスが報告書の公開を拒むのは、現経営陣が知られたくない事実が記されているからだろうか。
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